

ハープ奏者
内田 奈織
しばし京都を離れ、旅人となる時、旅先でいつも思うこと。それは、それぞれの街から、それぞれの音楽が聞こえてくるなあ、ということです。その街の景色、匂い、風、空の色、道行く人達…たくさんの事が組み合わさって、まるで楽器たちが奏でるハーモニーのような調和や色彩を感じさせます。もしかしたら、私たちの音楽を新しく創ってくれるのも、それぞれの街のハーモニーではないでしょうか。同じ曲を演奏しても、その地の空気感や聴いてくださるお客さまによって、違う響きになる気がするのです。もちろん、わが街京都にも特別なハーモニーを感じます。今日はお休み、リフレッシュ!という日は、よく四条へ出かけます。
ほらほら、音楽が聞こえてきましたよ。
ガイドブック片手に、修学旅行生がお土産を見ている楽しそうな姿。優雅なマダムがショウウインドウの前で足をとめられていると、何を買われるのかな?と想像してしまいます。バスを待っている外国の方、どのお寺へ向かわれるのかしら。みんなにこにこ、穏やかなゆったりした時間を過ごしています。この音楽は、例えるなら、わたくしの大好きなモーツァルトの「フルートとハープの為の協奏曲」の第一楽章。弦楽器やオーボエ、ホルンが伸びやかに自由にそれぞれの旋律を奏で、それをフルートとハープが華やかに彩る、あの曲です。
そして歯医者さんと美容院へ。のんびりはしごを終えて、四条河原町の交差点でふっと空を見上げると、西の空は茜色、八坂神社の上の空は青。薄暮の時間。優しい京都の夜の入り口です。先ほどの曲の続き、第二楽章の柔らかな調べが聞こえてきました。
夜は演奏仲間と会食の待ち合わせ。久しぶりに会うので嬉しいな。あちらこちらに笑顔がはじけています。京都の夜風に吹かれながら、楽しい宴のはじまりです。そんな楽しい街のざわめきは、元気な第三楽章。四条で一日、今日もよい日だったなって、幸せな気持ちで帰途につきます。
京都に住む人なら誰でも、それぞれの心の中に、「それぞれの四条通り」が存在することと思います。こんどお歩きになる時、あなたならどんな音楽が聞こえてくるかと、ちょっと心の耳をすませてみられるのはいかがでしょう。
そしていつか、青空の下、四条通りのステージでハープを弾いてみたいです。我が街京都の知り尽くした道に、ハープの音色がどんなにか素敵に響くことかと、またまた夢がふくらんできました!
