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尾州屋老舗「そばぼうろ金型」

梅と桜が咲き競う
素朴だが心に残るそばの菓子

そばぼうろ金型「ひとつ、召し上がってください」
勧められた京風そば餅は、餅ではなく饅頭だった。中国では口に入れる丸いものを餅と呼ぶそうで、これが名の由来である。

海道産の小豆を時間をかけてじっくり炊いた自家製の餡を、国産のそば粉、小麦粉、卵などを合わせた皮で包んで焼いている。口に入れるとそばと黒ごまの香ばしいかおりが鼻を抜け、餡の上品な甘さとそばの風味が咀嚼するたびに口いっぱい広がっていく。昭和の名匠・小津安二郎が撮影で京都を訪れたとき、このそば餅を進物にたびたび利用していたのもうなずける。

「尾州屋老舗」は、四条河原町の南西角にある。まだ高島屋もなかった昭和16年に創業。そばの老舗「尾張屋」の娘である小森ウタさんとその息子の繁一さんが、尾張屋から暖簾分けしたのが始まりだ。繁一さんの跡は妻のたみさんが2代目となり、現在は娘婿の加地咸朗さんが3代目として受け継いでいる。

にいただいたのが、そばぼうろ。ざくざくとした歯ごたえが心地よい。まるで冬の早朝にできた霜柱を踏みしめるかのようだ。そして、あっという間に口の中で溶け、かすかな甘い余韻が残る。もう一枚と無意識に手が伸びてしまい、まさに後引きである。

ばぼうろを作り始めたのは、昭和30年代前半。当時はひとつずつ型で抜いていたが、効率を考えて一度に14個抜ける型を考案した。そして現在は、すべて自動で行う機械を使っている。

ばぼうろの味わいは、この梅の形にある。花形にして真ん中に穴を空けることで表面積が増え、火の通りが良くなるのだ。
「そば餅もそばぼうろも自信を持って出してますけど、なんか地味でっしゃろ。華やかさがないっていうんかなあ」
と笑いながら出してくれたのが「桜きんつば」だった。一口食べて驚いた。刻んだ桜葉を練りこんだ皮でつぶ餡を包んで焼いてあり、桜の香りと品のある甘みが心地よい。まさに花がある和菓子である。これは、加地さんの娘婿である製造責任者の高見裕二さんが考案した。

 「商店街は、古くからある店が元気であるべき。伝統は受け継ぎながら新しいものも取り入れて、発展させる。うちもいい4代目がいるから、もっと頑張りたいと思てます」

そばぼうろの「梅」、金つばの「桜」ときた尾州屋老舗。次はどんな花を咲かせてくれるのか、これからが楽しみである。

京菓子司 尾州屋老舗
京都市下京区四条通河原町西南角
TEL.075(323)5900